小川一水 復活の地

 災害SF。ストーリーテラーとして、ますます磨きがかかっていく彼の作品は毎回楽しみである。今回も大上段に振りかぶって気持ちよく振り下ろしたら面白くなっちゃったというところかな。あんまり誉めてないのはまだ一巻なのでしかたないかも。それと、震災の表現が阪神大震災の報告書を読んでいるみたいで味気ない。無理やり塩コショウしたみたいなところはまだ健在だったのは残念だ。リアルすぎるのもねぇ。PTSDなんて騒ぐ阿呆がいなけりゃいいけど。
 それと構成の問題だが、歴史背景を途中に混ぜ込んでいるのが、物語の緩急をつけるのに役立ってはいるけど、微妙な細切れ感がよくない。むしろ章立てにして、インターミッションにするべきだったような気がする。
 まあ、今回もふんだんに伏線や仕込があるので、どうやって風呂敷をたたんでくれるかが楽しみだが、まだ、書き終わっていないようなので希望を述べておくと、第六大陸の二の舞はよして欲しい。最後に、オーバーテクノロジーで簡単にひっくり返されるのはつまらない。小川一水が書き込んでいく一人一人がする事を成して、物語が終わるような巻く引きを見せて欲しい。派手な異星人のオーバーテクノロジー水戸黄門の印籠よろしく終盤に突如現れて話を解決させてしまうのは、それまでがんばってきた作中の人たちの努力を全て根底から覆してしまう。ローンを後5回で返せるといったときに宝くじが当たっちゃたなんていう、うれしいようなこれまでの俺ってナニ?みたいな訳のわかんなさは見たくないのだ。
 SFは何も宇宙船が出てこなくたって異星人のオーバーテクノロジーが出てこなくたって充分に成立するのだ。むしろ、じっくりと星間世界の災害復興ドラマを描いて見て欲しい。10巻になっても20巻になっても買うからさ。小さくまとまるなよ。