第六大陸 2 小川一水 ハヤカワJA

 なんだか忙しかったのと、もったいなくてか、読むのが恐ろしくてかようやく読了。お昼休みの1時間と夕方残業付き合いの1時間ですっ飛ばして読んだのでまた、読み返すつもりなのだが。ということで、どうせ誰もこんなところ読んでないだろうから書いちゃおう。警告はしたし。
 正直言って胸をなでおろした。破綻することなく大団円を迎えていたからだ。むしろ、予定調和的ですらある。が、いいだろう。この小説は宇宙へ、宇宙開発へ目を向けた少年少女たちをひたすら導こうという物語なのだ。夢は(お金がかかるけれども)それをひたすら叶えようとする意志のがあれば成就するのだ。もちろんそれには、大人の理論やくだらない邪魔が入るけれども、それさえも巻き込んでいくだけの夢をもっている人たちはたくさんいるのだ。ハッピーでいいじゃん。
 もう、夏休みの読書感想文にしたっていいぐらいのジュブナイルSF。本人は土木系SFとのたまうだろうが。とにかく、マイルストーンとなりうる作品。今年の星雲賞受賞は間違いない。あとは野尻抱介氏が秋のJコレクションで何処まで巻き返してくるか。ああ、でもマルドゥック・スクランブルもあるんだ。なんてもったいない。(笑)
 鳥肌を立てたシーンもある。そっけないだけに、強烈だった。もう、伏線がというか予想できちゃうんだけど、あまりにも静謐な出来事。実際の事故もこんなもんさ。
 事故なら、作業中ならば警察と同時に労基署あたりも出てくるので、そのあたりの描写があったりしても彼の筋としては受けたような気がするけどね。警察の事情聴取のあとは労基署の事情聴取があって、JAXAの聴取があってとか。お得意のお役所描写をこのあたりでやってもよかったのでは。だいたい、建築基準法や消防法はどうするんだとか、へんな突っ込まれ方をかわす描写もあったほうが面白いよね。
 問題はだな、短い。これだけのガジェットを詰め込んで詰め込んで真空パックしちゃったぐらい短い。もったいない。マルドゥックと張り合って3巻にしちゃうとか。もっとも、逆に冗長なイメージを持ったかもしれないけどね。もっと、読みたかった。SFマガジン連載で5年ぐらいやってくれてもよかったのに。今からでも書き直しを含めて、連載開始しないかな。
 それに、あれはちょっと余計だったような気がするんだが。なぜ、あれを出したかったかはわからない。あそこまで、地道に技術開発してきたのに最後でオーバーテクノロジーを持ってきたら、土木系SFじゃなくなっちゃうし。もともと、ネックだった輸送の問題をそれにすりかえちゃうのはだめだろう。そんなんじゃプロジェクトXに取り上げてもらえなくなっちゃうぜ(笑)
 いつものことだけど、もっともっと面白い物語をこの作者には作り上げて欲しい。そのためには、人物の掘り下げ方を工夫する必要があるだろうし、ガジェットの描写にこだわる手法も見直す必要があるかもしれない。もっとも、それが彼の独特の味でもあるので難しいところであるかもしれない。
 余計なことだが、幸村誠で「第六大陸」漫画化しないかな。いや、アニメ化はしなくていい。たぶん、味も素っ気もないつまらないアニメにしかならないから。タニグチリウイチ氏は日記で「「秦ぁぁぁぁぁぁぁぁ」と叫ぶ青峰=織田裕二の声が聞こえて来ます。織田なのか?」と。しまった、想像したらそのとおりになっちまった。いや、映画化はもっとやらないでー。(>_<)