不気味

 テレビを見ていて、吐き気を催す。見ていたのはホラーでもスリラーでも戦争映画でもドキュメンタリーでもなんでもない。ワイドショーと化しているニュースだ。
 題材は、ユニバーシアード韓国大会で日韓マスコミの騒ぐところの「美女軍団」。俺の目にはカメラマンが一生懸命撮影している被写体が残念ながらひとつも美女には見えない。北朝鮮や、マスコミの方々の基準では美女なのかもしれないが。
 吐き気を催した理由は、彼女たちが二目と見られない醜女だったからではない。容姿は並といえるだろう。俺が美女ではないと感じている理由もそこにつながっているのだが、恐ろしいほどに統制された、自由意志の無い、にこやかな振る舞い、にじみ出てくる恐ろしいほどの愛国心。それが、自由意志の元に生まれた帰属感からかもし出されるものではなく、誰かの強制とも言える暴力的に刷り込まれた意識。狂信的な新興宗教とも見まがわんばかりの信仰心。
 そこには、美しさなど微塵もないのだ。あるのは、多分自分たちのせいではない愚かさ。政権を維持するためだけに行われる洗脳が見えるのだ。そして、それがあたかも自分たちの意志で行っているかのように振舞っているのが人間的に深みを失わせ、外面だけしか見えないため、美しさを感じられないのだ。
 彼女たちに問えば、「民族統一」「将軍様の喜び」「勤め」などの言葉が出てくるだろう。そして、この応援は自分たちの意志で行っているのだ、と。
 だが、無意識で抑制された社会での自由意志が本当に彼女たちの意思だといえるのだろうか。彼女たちに選択権はないだろう。選択肢さえないかもしれない。伝聞が正しければ、幼児期から繰り返される教育によって焼き付けられた意識だろう。彼女たちにとってはそれが正義であり、世界のすべてなのだ。同志以外は自分たちを堕落させ、国を滅ぼそうと姦計を図る悪漢共なのだ。
 入場行進での日本と合衆国チームの時に、応援を止めてしまうところに、政治的な抑圧を感じる。彼女たちが自由に応援をできない証しではないのか。ロボット以下の統制された人形のような応援風景を見ていて、そこにある非人道的な社会を感じる故に、吐き気を覚えたのかもしれない。
 マスゴミの取り上げ方は、否定的であるよりも、好奇に満ちた下卑たものだ。見事に北朝鮮プロパガンダに乗せられている。決してあれを、賛美してはならないのだ。フセインよりも、アルカイダよりももっと非人道的な行いをしている国家であることがこれではっきりと見えるのに、それを「唾棄すべき行為」として表現することができないマスゴミの無能さだけが、浮き彫りになったとしかいえまい。