孤独

「はやぶさリンク」:明日14日、朝9時30分から記者会見: 松浦晋也のL/D
記者会見があった模様。詳細は上記でどうぞ。

 今回、サンプルリターンを全世界で初めて試みた。宇宙開発は過去、マスコミの監視の中、びくびくしながら、確実性の高いプロジェクトを実行してきた。しかし宇宙開発には、リスクを取っても先に進むということも必要なのではないか。
 高い塔を建ててそこへのぼってみれば新たな地平が見えるものだ。そのような塔を自ら建てるという意識を鼓舞したという点でははやぶさには意味があると考えている。

この意識ですよ。それはなぜかというと、

宇宙開発はポリティカルに進めざるを得ない。税金を使っているので確実性の高いことを追求せざるを得ないのだ。あくまでも個人的見解ですよ(笑いが起きる)。
 しかし、これを続けていると、確実な技術を組み合わせて行う宇宙開発が主流になってしまう。オフザシェルフテクノロジーという。アメリカのスターダストはこれだ。
 これは行政的には非常に考えやすい計画だ。安いし安全。うまくサイエンスの目的に合致すれば非常に効果的である。
 しかし、オフザシェルフテクノロジーは、棚の上の出来合い技術がなくなれば、そこでお終いだ。
 その時に、NASAESAが、出来あい組み合わせの状態からポリシーを転換できるかどうか。私は難しいと考える。有能な役人であるほど、転換に躊躇すると思う。
 しかし我々ははやぶさをやったおかげで、例えば「小惑星への着陸まではできます」とはっきり言うことができる。共同研究の申し込みが多い背景には、我々なら「できる」と言い切れるということがあると考えている。
 くれぐれもNASAESAの悪口を言っているのではないことを付け加えておく。

大手が官僚的になってしまっている以上ベンチャーの日本がその隙間を埋めるしかないのである。この辺は先端技術と社会という枠組みで考えたとき、その最先端にいる責任者の貴重な意見だよね。失敗することもあるが、それは犬死ではなく次の成功へのワンステップであるという考え方をマスコミや国民ができなければ、社会は前へ進んでいかない。
この後の的川教授の論説委員のくだりは松浦さん自身が感じているところでもあるようだ。現場の記者とデスクの温度差をなくすること。記者の人たちも、詳しくはわからなくとも、歴史的瞬間に立ち会った匂いはかぎつけているだろう。だが、上層部がその熱気を一般人に伝えられない能無しなのだ。マスコミの大企業病の際たるところなんだろう。

とにかく、はやぶさ自体は苦境に陥っている。だが、あらゆる可能性を試す運用チームの前向きな姿勢はとても輝いている。帰還が3年延びてもなお挑戦するのだ。これが技術を生み出すことなんだ。今、日本は小さな探査衛星を見つめることで、これからの姿を垣間見ているような気がしてならない。